経営学史学会第22回全国大会は、≪現代経営学の潮流と限界―これからの経営学―≫の統一論題のもと、5月16日・17日・18日を会期として関東学院大学で開催され、活発な議論が展開されました。齋藤毅憲大会実行委員長および高橋公夫開催校責任者をはじめ実行委員会諸氏の周到な準備と行き届いた大会運営に対して、衷心より感謝申し上げます。
本大会の会員総会で役員の改選が行われ、新理事会において不肖わたくしが第8期の理事長に推挙されました。大変光栄なことですが、20年の歴史を踏まえ次なる10年に向けて、第7期の小笠原英司理事長と同期のわたくしは世代交代の時期と考えており、まったく思いもかけないことでした。浅学菲才は元より承知しており、当学会の運営の重責に耐えうるか疑問を抱きますが、拝命をしたからには、微力ながら学会発展のために責務を全うしたいと念じております。
経営学史学会は、成人の年齢を経て間もないものの、多くの経営関連学会の中でも確固たる地位を築いており、20周年記念事業である経営学史事典第2版と経営学史叢書全14巻の刊行は、その証左であります。このことは、偏に歴代の役員の先生方の熱き想いと懸命な努力、何よりも会員諸氏のご尽力によるものと受け止め、その伝統を引き継ぎ、それをさらに発展させていくことが第8期の使命であると考えております。
経営学は、理論と実践を不可分のものとして時代とともに歩み、20世紀の産業文明の展開とともに進展をしてきました。そして21世紀も10有余年を過ぎた今日、ますます混迷を増している文明社会の諸相に対して経営学のさらなる向上と充実を図らなければなりません。しかし、時代の急激な流れと相まって研究者はとかく現前の事象に眼を奪われ、専門分化し孤立分散的な研究を行う傾向が次第に多くなってきたことは否めません。それ故にこそ経営学史研究の存在意義が問われます。
経営学史は、その時代時代の経営学が描き出した経営存在の歴史を映しとる鏡として、その鏡に映しとられた歴史を解釈し、批判することを通して経営学の未来に貢献せんとするものであります。言うまでもなく学史研究は懐古趣味的なものとしてではなく、未来への発展の道を見出すことに意味があります。「歴史は繰り返す」ということが言われますが、しかし、学史研究は「歴史を繰り返させない」ために行うものであります。とくに、近年の若い世代の研究者の学史研究離れの傾向に対して、経営学の歴史研究の意義を積極的に示すことが必要でありましょう。そのためには、経営学史研究の現状を批判的に検討し、学史研究のあり方と意義を広く示し、若手研究者に経営学史の魅力を示すことが求められるのではないでしょうか。
わたくしおよび第8期の役員は向こう3年間の運営を担いますが、3年目は当学会の四半世紀の歴史を迎える第25回大会であり、まさに真価が問われる時期に来ています。会員諸氏のご指導とご鞭撻を得て、経営学史学会の興隆と、それを通しての経営学史研究の発展のために力を尽くす所存でございます。何卒、会員の皆様の一層のご協力とご支援を賜りたく、お願い申し上げます。