活動・事業

 本会の目的に即して、次のような活動がなされてきている。
 年次大会と理事会・会員総会と年報については、後ほど年度毎に示すことにする。
 さらに、創立10周年記念事業として『経営学史事典』(文眞堂)が刊行されたが、これはこの項の最後に示す。なお、学史学会に相応しい出版社が必要とされていたが、文眞堂さんがますます発展されてきている。

 

.創世期

 創立大会
 1993年5月29日(土)、創立大会当日、大会に先立ち午前10時から、明治大学駿河台校舎、大学院2階、第2会議室において、最後の設立準備委員会が開催された。
 まず、片岡委員から、昨年9月に学会設立の準備作業に入ってから今日に至るまでの経過が簡単に報告された後、次の議題に入った。@学会設立発起人会にかける議題として、(a)設立趣旨説明と経過報告、(b)会則、(c)役員人事、(d)次回開催校と統一論題、(e)研究年報、(f)収支予算書、(g)事務局、(h)その他、について、準備委員会の原案を説明し、議論した。A創立会員総会の議題については、発起人総会で了承を得た後、それらを発起人会の原案として、午後からの会員総会に諮ることにした。B第1回理事会に諮るべき議題として、(a)幹事の指名、(b)学会事務局の設置、(c)顧問の選任、(d)次回大会の統一テーマと日程、(e)研究年報の発行体制、(f)理事職務の分担、があげられた。また、当日までの会計報告が経理担当の小笠原委員から報告され、了承されるとともに、当準備委員会の費用は全て学会会計に繰り込み、計上して、後日精算することについても了承された。
 記念講演=山本安次郎、三戸公。研究発表=小林敏男、稲村毅、永田誠、北野利信、加藤勝康(敬称略)。これらは翌年5月に『経営学の位相』(年報第1輯)と題して文眞堂から発刊された。また、大会の詳細な内容紹介は、この年報第1号巻末に納められている。以降、このスタイルは毎号継承されていくこととなった。

 第2回大会
 経営学史学会第2回大会は1994年5月20日(金)、21日(土)、22日(日)に、滋賀大学経済学部において開催され、通常の学会運営方式となった。
 統一論題は「経営学の巨人」であった。翌年5月に同じ題名の『経営学の巨人』(年報第2輯)という年報が発行された。それには、@統一論題の報告、A自由論題のうち原稿応募のあった4つの論文、B統一論題「経営学の巨人」で取り上げたニックリッシュ・バーナード・マルクスについてそれぞれ権威である吉田修先生・飯野春樹先生・片岡信之先生に原稿をお願いした「文献」が収録された。こうして統一論題+自由論題+基本文献を収録するという本学会年報の原形態が形成された。


 
.日米経営学の回願と展望

 第3回大会
 経営学史学会第3回大会は1995年5月19日(金)、20日(土)、21日(日)に、中京大学経営学部で開催された。本年度は、目を国内に転じて、「日本の経営学を築いた人びと」という統一論題が選ばれた。翌年5月に同じ題名の『日本の経営学を築いた人びと』(年報第3輯)という年報が発行されたが、その第U部「文献」では、第T部に掲載された経営理論のそれぞれの執筆者から提出していただいた文献資料を編集委員会で検討し、統一を図った。掲載する文献は原則として単著とするが、共著あるいは編著でも特に不可欠と思われるものは取り上げることにした。これが本学会の1つの特質になりつつあった。
 
 第4回大会
 経営学史学会第四回大会は、1996年5月17日(金)、18日(土)、19日(日)の3日間にわたって青山学院大学経営学部において開催された。
 本年度は、目を外に転じ、経営学の発展をリードしてきた主要国のアメリカの経営学を取り上げるべく、統一論題を「アメリカ経営学の潮流」にした。翌年6月刊行の年報も同じ題目となった。
 役員改選が行われ、加藤勝康理事長、坂井正廣・大橋昭一 両副理事長を中心にした新体制が出来上がった。

 第5回大会
 経営学史学会第5回大会は、1997年6月6日(金)、7日(土)、8日(日)に関西大学千里山キャンパスで開催された。
 本年度の統一テーマとしては2つの柱が設定された。1つは、「経営学研究のフロンティア」であり、「経営学の最新動向だけでなく、すでによく知られている学説や古典であっても、新しい見地による研究発表や研究動向の検討を含むもの」とされた。第2の柱は、「日本の経営者の経営思想」で、現役経営者を含む特別ゲスト(住友電気工業株式会社 取締役会長・川上哲郎氏)を招いてのシンポジウムがその内容であった。今年からの試みである予稿集が事前に参加者に郵送された。年報は、『経営学研究のフロンティア』(年報第5輯)という題目で翌年5月に発行された。

 

。.経営学研究の回願

 第6回大会
 経営学史学会第6回大会は、1998年5月22日(金)、23日(土)、24日(日)の日程で久々に東北の地青森公立大学で開催された。統一テーマは、「経営学史研究の意義とその課題」であり、主にアメリカの経営学説の5つのテーマに関して学会を代表する5つの報告者を配置し、最終日の午後は、W.G.Scott教授を含む3つの報告を追加して、シンポジウムが組織されていた。自由論題報告者も、優秀な若手研究者に多くの機会を与えようと前年の2会場4人から4会場8人に増員された。年報『経営理論の変遷――経営学史研究の意義とその課題――』(年報第6輯)については、紙幅の関係から、一論文あたりの原稿枚数を例年より少し減じて執筆依頼をした。また、第W部「文献」でも、自由論題論文に関係する文献の掲載を断念せざるを得なかった。

 第7回大会
 経営学史学会第7回大会は、1999年5月21日(金)、22日(土)、23日(日)の日程で桃山学院大学において開催された。統一論題は、「経営学百年―鳥瞰と未来展望(One Hundred-Year History of Management Theory: Overviews and Perspectives)」であり、D.A.Wren教授の特別講演も含め、経営学の「対象・方法論」、「人間問題」、「技術問題」、「情報問題」、「倫理・責任問題」、「国際化問題」、「日本的経営論」についての理論的変遷と将来展望に関して、報告がなされた。自由論題報告者は、4会場8人により担われた。翌年5月刊行の年報も同じ題目となった。役員改選が行われ、村田晴夫理事長、稲葉元吉・佐護譽 両副委員長を中心にした新体制が出来上がった。

 第8回大会
 経営学史学会第8回大会は、2000年5月19日(金)、20日(土)、21日(日)に、九州産業大学において開催された。昨年度の議論を引継ぎ、「経営学百年――組織・管理研究の方法と課題――」という統一論題が設定された。経営学研究の方法論的反省の必要を提起した基調報告、これを受けて経験と科学視点からの経営学の展望、合理性と人間性、プラグマティズムと論理実証主義、組織変革とポストモダン、複雑適応系、システムと複雑系の諸理論について、活発な議論が展開された。同時に、3会場で9名による自由論題報告と、ソウル大学の愼侑根教授の特別講演も行われた。翌年5月刊行の年報の題目は『組織・管理研究の百年』(年報第8輯)とすることになった。

 第9回大会
 経営学史学会第9回大会は、2001年5月18日(金)、19日(土)、20日(日)に、札幌大学において開催された。
 統一論題は、「テイラーからITへ――経営理論の発展か、転換か――」であった。経営理論の発展と転換の意味を深く論じた基調報告、これを受けて科学的管理の内包と外延、情報技術革命の史的展望、テイラーの断絶と連続、情報化と協働構造について、各分野を代表する方々がITの意義を問いかける報告を行ない、20日午後からの統一論題シンポジウムでは、以上の報告を受けて活発な議論が展開された。同時に、19日の午前中は、3会場で9名による自由論題報告と討論が行なわれた。翌年5月刊行の年報の題目は『IT革命と経営理論』(年報第9輯)とした。

 

「.経営学研究の展望

 第10回大会
 経営学史学会第10回大会は、2002年5月17日(金)、18日(土)、19日(日)の3日間にわたって明治大学において開催された。
 統一論題は、「現代経営の課題と経営学史の挑戦――グローバル化・地球環境・組織と個人――」であった。日本企業の現状分析を踏まえたうえで、経営学としてのグローバル経営論の可能性を開拓する研究、また、経営学としての環境論の実践的可能性とともに、この問題に対する学際研究における経営学の位置、さらに、現代日本経営における「組織と個人」の関係の経営学的再検討、最後に、以上の現代経営の諸問題に対応しうる日本的経営論、を問い直す必要があるとされた基調報告のもとに、5つの報告があり、最終プログラムでシンポジウムが行われた。また、自由論題の報告は4会場12名(ベテランの先生も含む)によってなされた。
 この大会で、創立10周年記念事業として刊行された『経営学史事典』(文眞堂)が出席者に配布がされ(欠席会員には後日宅配)、また記念講演が阿部謹也名誉教授により行われた。
 役員改選がなされ、佐々木恒男理事長、齊藤毅憲・仲田正機 両副理事長を中心にした新体制が出来上がった。

 

経営学史辞典
 (創立10周年記念事業)

  経営学史辞典

 (文眞堂刊 2002年6月)

 経営学史学会の創立において会員達は、経営学がその領域を拡大し、方法論的にも、問題意識と問題領域においても、多様な展開を見せる時代にさしかかっていた時代にあって、それらを包摂しつつ,さらなる展開を、真の意味での「学」としての経営学の構築によって果たさなければならないという共通の理想、によって支えられていた。
 経営学史学会創立10周年に当たって、記念事業として編集された『経営学史事典』は,このような経営学史研究の使命を自覚し,その視点に立っている。そして、諸研究者ならびに諸実務家、そしてさらに願わくは諸市民、これら諸々の交流に便宜を供することによって、経営学史研究の進展が一層促進されるようにとの願いがこめられている。
 この『経営学史事典』は、学史・理論の単なる辞典ではなく、経営学史研究の展望ともなり,用語の解説ともなるように,また,読む事典と引く辞典を兼ねられるように、工夫がしてある。そのためにこの事典は、大別して次の3つの部分から構成されている。

@ 大項目の解説編:T 経営学史研究の意義と方法。U 経営学研究の史的展開(A 各国における経営学研究の史的展開、B 経営学の主要問題領域[企業・組織・機能・その他]における研究の史的展開)。
A 小項目の用語編:V 事項と経営学の名著・古典・基本文献。W 人名。
B 索引(事項索引、人名索引)。

 なお、@の解説編とAの用語編は有機的に関連づけられている。すなわち、@の解説編に関連する重要項目(理論,事項,重要著書,人名など)を、Aの用語編に出来るだけ多数収容して簡潔な説明を付し、各種の関連づけも行われている。

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